米通商代表部(USTR)は2日、大手IT企業を対象とする「デジタルサービス税」を導入したか、導入を計画しているEU、英国など10カ国・地域に対する調査を開始すると発表した。米政府はこれらのデジタル税をグーグルなど「GAFA」と呼ばれる同国の巨大IT企業を狙い打ちにした不当な課税として猛反発しており、不公正な課税と判断すれば制裁措置発動を検討する。
調査対象となるのはEU、英国、イタリア、スペイン、オーストリア、チェコ、トルコ、インド、インドネシア、ブラジル。
欧州では世界的に活動する多国籍IT企業の課税逃れを防ぐため、デジタルサービス税を導入する動きが広がっており、これまでに主要国では英国、フランス、イタリアが導入済みだ。先陣を切ったのはフランスで、売上高が全世界で7億5,000万ユーロ以上、仏国内で2,500万ユーロ以上のIT企業を対象に仏国内での売上高に3%を課税する法案が2019年7月に成立した。
EUでは域内共通の「デジタルサービス税」を導入する案をめぐり、加盟国の意見が分かれて実現に至っていないが、新型コロナウイルスの感染拡大で大きな打撃を受けたEU経済の復興に向けた基金の創設に向けて、同課税案が再浮上している。スペインでは議会で近く課税法案の審議が始まることになっている。
米国はフランスのデジタル税について、2019年に同様の調査を開始。USTRは12月「GAFA」のグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンを標的とした不当な措置とする調査報告書を発表し、シャンパンやチーズなど最大24億ドル相当の仏製品に最大100%の追加関税を課す方針を打ち出した。ただ、その後の協議で、経済協力開発機構(OECD)が検討している国際的なデジタル課税制度の実現を前提に、それまでフランスが課税を中止することで合意。米国が報復関税発動を見送ることになった経緯がある。
米政府の今回の動きは、この成功例を他の国・地域に対しても再現し、課税を差し止める狙いがある。とくに域内共通の課税制度導入を視野に入れるEUをけん制した格好だ。
これに対して、4月にデジタル税を導入した英政府は、財務省の報道官が2日、「我が国のデジタルサービス税は、(IT企業)が英国内の利用者から引き出した価値に見合った税を納めるようにするもので、国際協定に違反していない」と反論した。