英競争・市場庁(CMA)は8日、日立製作所が仏電子機器大手タレスの鉄道信号事業を買収する計画について、英国での市場競争が阻害される恐れがあるとの暫定的な見解を示した。国内鉄道網の整備コストが膨らみ、デジタル化にも悪影響が及ぶ可能性があるとして、こうした懸念に対応するよう求めている。
日立は2021年8月、鉄道システム子会社の日立レールを通じてタレスの鉄道信号事業を16億6,000万ユーロ(約2,500億円)で買収すると発表した。当初は23年初頭の手続き完了を見込んでいたが、22年12月、英国とEUの競争当局による審査が長引いており、買収完了は23年後半になるとの見通しを示していた。
CMAは「事業統合が実現した場合、すでに市場集中度が極めて高い分野でサプライヤーの数が減り、結果的に競争が損なわれ、国内の鉄道網と乗客を取り巻く環境が悪化する恐れがあると暫定的に判断した。今回の調査結果をもとに、乗客を保護しながら、より信頼性が高く、効率的で近代的な鉄道網を確立するという政府目標を達成するため、日立とタレスがCMAの懸念にどのように対応可能か協議する」と表明した。
日立はCMAの見解に対し「残念だ。指摘された懸念にどのように対応するか今後精査する。買収によって英国での競争が阻害されることはない」との声明を出した。英国とEU以外の地域ではすでに規制当局の承認を得ているという。