トルコで5月28日に行われた大統領選の決選投票は、現職のエルドアン大統領(与党・公正発展党=AKP)が野党統一候補のクルチダルオール氏(共和人民党=CHP)を破り勝利した。得票率はエルドアン氏が52.16%、クルチダルオール氏は47.84%。首相時代も含めすでに20年に渡り権力の座にあるエルドアン氏は新たに5年の任期に臨む。
エルドアン氏の得票数は主に国内北部や中部、シリアと国境を接する南部、それに在外投票で多かった。クルチダルオール氏は西部と東部、イスタンブールやアンカラ、アンタリヤなどの大都市とその周辺部で票を集めた。エルドアン大統領は勝利演説で支持者に対し、選挙の真の勝者はトルコだと述べ、自らへの支持を国民の総意として表した。
エルドアン大統領は2014年の直接選挙で大統領に就任後、18年には大統領制を導入して広範な権限を集中してきた。民主主義陣営の欧米とロシアや中国など強権的な国々との間でバランスを取る独自外交で存在感を示す一方、国内経済では高インフレ下でも利下げを続ける異例の措置により物価の高騰を加速させ、国民の窮乏を招いたと批判を受ける。
クルチダルオール候補は従来、少数派への配慮を標榜していたが、第1回投票の後に主にシリアからの難民を批判する姿勢に転じており、そうした変節が有権者の支持を失わせた可能性がある。同氏は今回の選挙について、ここ数年の中で最も不公平だったと述べて悔しさを滲ませた。
エルドアン大統領は同国が今年10月に現在のトルコ共和国として建国100年を迎えることから、今回の選挙を大きな節目と位置付けていた。再選後は同国の強国化に向けて一層の内政引き締めや実利的な外交を展開するものと予想される。エルドアン氏の続投により、中東地域の要である同国は引き続き「安泰」となることから、欧米やロシア、ウクライナをはじめ各国首脳は相次いで同氏の勝利に祝意を伝えている。