車載電池ノースボルト、独工場を米工場と同時並行で建設

スウェーデンのスタートアップ企業ノースボルトがドイツ北部のシュレスヴィヒ・ホルシュタイン(SH)州ハイデに車載リチウムイオン電池セルの巨大工場(ギガファクトリー)を設置するプロジェクトは、ほぼ計画通りのタイムスケジュールで実施される可能性が高まってきた。欧州自動車メーカーの引き合いが強い上、補助金が上乗せされる公算が高まってきたためだ。ペーター・カールソン最高経営責任者(CEO)は同社と独経済・気候省、SH州政府が12日付で出した共同声明で、「ドイツ政府の支援を受け、ノースボルトはハイデでの建設に向け次のステップに進む」と明言した。

ノースボルトは昨年3月、ハイデ工場の建設計画を発表した。年産能力は電気自動車(BEV)約100万台分に相当する60ギガワット時(GWh)で、投資額は最大46億ユーロ。2025年の生産開始を予定していた。

だが、米国のインフレ抑制法(IRA)成立を受け、同社はハイデ工場の計画先送りを検討し始めた。北米にセル工場を設置すれば、IRAに基づく手厚い補助金を受給できるためだ。カールソン氏は11月、場合によっては「米国での事業拡大を差し当たり欧州に優先させる可能性」があるとことを明らかにした。

これに危機感を持ったドイツ政府とHS州政府は同社と集中協議を開始。欧州連合(EU)欧州委員会の承認が得られれば、補助金を上乗せすることを確約した。メディア報道によると、内閣官房内には「ノースボルト・タスクフォース」が設置されたという。

ハイデ工場に対してはこれまで、EUの「欧州の共通利益に適合する重要プロジェクト(IPCEI)」の枠組みで国と州が総額1億5,540万ユーロの補助金を交付する計画だった。

今回の声明によると、EUの公的補助規則を一時的に緩和する「暫定危機対応・移行枠組み(TCTF)」も活用して補助金を上乗せする方向だ。

TCTFはロシアのウクライナ侵攻を起点とするエネルギー危機を受けて昨年3月に時限導入された「暫定危機対応枠組み(TCF)」を補完するもの。米IRAなどを踏まえ、加盟国がより広範なプロジェクトに有効な支援策を講じられるようにしている。25年末までの時限措置となっている。

ドイツ政府はハイデ工場へのTCTF補助金交付に向け、欧州委員会との協議をすでに開始した。年内の承認獲得を目指している。順調に行けば同工場からのセルの出荷を26年に開始できる見通しだ。

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