ハンガリーのシーヤールト外務貿易相は11日、訪問先のロシアで、同国産天然ガスの追加供給を含む新たなエネルギー協定に調印したことを明らかにした。追加供給は国営ガスプロムとの長期契約で定められた量を超えて購入を可能にするもので、ハンガリー側が「極端な状況」に備えガス代金の支払いを延期できるようにすることでも合意した。ロシアからより多くのエネルギー資源を調達しようとするハンガリーの姿勢は、同国へのエネルギー依存を減らし、プーチン政権との直接的な接触を避けようとするEUや北大西洋条約機構(NATO)の足並みを乱すものと受け止められている。
シーヤールト外務貿易相はエネルギー問題を担当するロシアのノバク副首相をはじめ、財務省とエネルギー省、ロシア原子力公社(ロスアトム)、国営送油会社トランスネフチの代表者らと会談を行った。同外務貿易相は、ロシアからハンガリーは天然ガスの80~85%、原油の80%を輸入していると指摘し、継続的で途切れのない供給が「非常に重要」だと強調。「ロシアは常にエネルギー資源の信頼できる供給者だ」と述べた。
ハンガリーは2021年にガスプロムとの間で結んだ15年契約に従い、ウクライナを経由するドルジバ・パイプラインを通じて石油を、ブルガリアとセルビアを経由するトルコストリームを通じて天然ガスを輸入している。確保しているガス輸入量は年間約45億立方メートル。今回はこれに加えて7億立方メートルの供給分を確保した。ハンガリーは合計容量が最大1,650メガワット(MW)のコンバインドサイクル・ガスタービン発電(CCGT)設備を数年内に3基、建設する計画を持っており、ロシア産ガスへの依存をますます強めている。
シーヤールト外務貿易相はまた、パクシュ原発の拡張工事の資金調達に関する契約を修正することでロスアトムと合意した。同原発は首都ブダペストの南方約100キロに位置する。出力440メガワット(MW)のロシア型加圧水型原子炉(VVER)が4基、稼働し、国内電力需要の約半分を賄う。拡張計画は1,200MWのロシア製VVERを2基、新設する内容で、入札手続きを踏まず2014年にロスアトムに発注した。