日・英が近く貿易交渉開始へ、日欧EPA土台に包括的協定

英政府は12日、日本との自由貿易協定(FTA)締結に向けた交渉を近く開始すると発表した。初回会合はテレビ会議方式で開催する。日・EU間の経済連携協定(EPA)を基盤に、デジタル分野などでより踏み込んだ内容の包括的な協定の締結を目指す。EU離脱後の急激な変化を回避するための「移行期間」が終了すると、日欧EPAによる低関税などの優遇措置が失われるため、12月末までに合意したい考え。ただ、英国内では新型コロナウイルスの世界的流行を受けて移行期間の延長を求める声が高まっており、先行きは不透明だ。

トラス国際貿易相は声明で「英国にとって日本は最大級の貿易相手の1つであり、新型コロナウイルスの影響で困難を抱える中、新協定は貿易や投資の拡大と雇用創出に寄与する」と強調。「特にデジタル分野やデータ移転などの領域で既存の協定より踏み込んだ内容の合意を目指す」と表明した。さらに「日本とのFTAは環太平洋経済連携協定(TPP11)につながる重要なステップであり、同協定への参加によって貿易先の拡大や経済成長が可能になる」と述べた。

英政府が示した交渉方針によると、英側は金融サービスや法律などの専門サービス、繊維・衣料品などの分野で日本側に譲歩を迫る構え。中小企業や投資家に新たなビジネス機会を提供することや、EUと中国以外で供給網を拡充し、サプライチェーンを強化することなども交渉目標に盛り込んだ。

英政府の統計によると、2018年の日英間の貿易額は約291億ポンド(約3兆7,740億円)。日英FTAが発効すると二国間の貿易は年間152億ポンド拡大し、関税の撤廃や引き下げにより英国の輸出業者は年間3,300万ポンドの節減が可能と試算している。

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