欧州では新型コロナウイルスの感染拡大を抑制するために講じた措置の効果がみられるとして、外出制限や経済活動の制限を緩和する動きが広がっている。ただ、警戒を緩めれば再び感染が拡大する恐れがあるため、各国は制限措置を緩和する一方で非常事態宣言を延長するなど、慎重な姿勢を見せている。
英国のジョンソン首相は10日、3月下旬に導入した外出制限を段階的に緩和する計画を発表した。引き続き在宅勤務を基本とするものの、建設業や製造業などリモートワークが困難な業種について、11日から出勤を奨励する。13日からはこれまで1日1回としていた運動のための外出制限を取り払う。ただし、いずれも人との距離を取るソーシャルディスタンスの措置は継続し、通勤時にはできるだけ公共交通機関を避けて自転車や車を使用するよう求めた。
休業中の店舗は6月から段階的に営業を認める。現在は食料品店や薬局など一部の店舗のみ営業を認められているが、早ければ6月1日から警戒水準を現在の「レベル4」から「レベル3」に引き下げ、小売店などの再開を認める。休校が続いている学校も小学校の低学年から順次再開する。さらに7月には飲食店やホテルなど、一部サービス業の再開を目指す。
一方、海外では今後感染のピークを迎える国や地域が多いことから、空港での検疫体制を強化する。地元メディアによると、政府は空路での入国者に対して14日間の強制隔離を求める方針とみられる。
ジョンソン首相は外出制限の緩和に合わせ、新型コロナ対策のスローガンを従来の「ステイ・ホーム(家にいよう)」から「ステイ・アラート(警戒を続けよう)」に変更。「今はまだロックダウンを解除する時ではない。代わりに、コロナ対策を次の段階に進めるための最初の注意深い一歩を踏み出す」と強調。段階的な緩和計画を実行するには、1人の感染者から新たに何人に感染したかを示す「実効再生産数」が順調に下がっていくことが条件になると説明し、感染が再拡大する「第2波」の兆候が見られた場合は「躊躇なくブレーキをかける」と警告した。
一方、ドイツのメルケル首相は6日、3月から実施していた制限措置を大幅に緩和し、飲食店などを含む全ての店舗の営業を認める方針を発表した。4月20日から小規模の店舗に限って営業を認めてきたが、感染者数はその後も減り続けており、正常化に向けて一段の緩和が可能と判断した。
メルケル首相と16州の州首相が電話会議で合意した内容によると、今後はデパートなど8,000平方メートルを超える大型店舗も営業を再開できる。レストランやホテル、映画館などは感染状況に応じて州ごとに再開時期を判断する。プロサッカー「ブンデスリーガ」は5月後半から無観客で再開される。
一方、人との距離を1.5メートル以上とることを求める「接触制限」は6月5日まで延長し、公共交通機関や店舗ではマスクの着用が義務付けられる。また、新規感染者数が1週間で人口10万人当たり50人を超えた自治体は、直ちに制限措置を再導入しなければならない。
フランスでは11日から2カ月近く続いていた外出制限や経済活動の制限が緩和された。新たにデパートやブティックなどの営業が再開され、100キロメートル以内の外出も可能となった。ただし、レストランやカフェ、映画館など集団感染が起きやすい店舗の再開は見送られ、公共交通機関を利用する際はマスク着用が義務付けられる。
一方、仏議会は9日、今月24日までとなっていた「公衆衛生上の緊急事態」を7月10日まで延長する法案を可決した。これにより、政府は外出制限を緩和した後も、市民の移動や店舗の営業を制限したり、集会を禁止するなどの措置を講じることが可能になる。