欧州では新型コロナウイルスの新規感染者数や死者数の増え方が緩やかになっていることから、段階的に外出制限を緩和し、経済活動を再開する動きが広がっている。ただ、人の往来が戻れば再び感染が拡大する恐れがあり、各国は外出できる範囲や時間を指定し、マスクの着用を義務付けるなど、経済活動の回復を図りながら「第2波」を阻止するための新たな対策を打ち出している。
フランスのフィリップ首相は4月28日、外出制限の緩和計画を発表した。同国では3月17日から食料品店や薬局などに限り営業を認めてきたが、5月11日以降は大型店舗や飲食店などを除いて再開が可能になる。自宅から100キロ以内の移動も認められるが、都市間の移動は職業上必要な場合などに限られ、公共交通機関を利用する際はマスクの着用が義務付けられる。外出時に携帯が義務付けられている外出証明書は同日から不要となる。
3月から一斉休校となっている学校は、地域や学年に応じて徐々に再開する。1クラスの出席者を15人以下に抑えるなどの感染予防策を講じたうえで、小学校は11日、中学校は18日から段階的に再開する。レストランやカフェ、映画館、美術館などは少なくとも6月初めまで閉鎖を続ける。
一方、仏政府は2日、今月24日まで予定していた「公衆衛生上の緊急事態」を2カ月延期すると共に、国外から入国する全ての人に対して検査を実施し、検査結果に拘わらず14日間の隔離措置を取る方針を発表した。4日に同措置を盛り込んだ法案を上院に提出し、5日にも下院に送られる見通し。ベラン保健相は「われわれはウイルスと共に生きなければならない。5月11日からの段階的な制限解除で警戒を怠れば、これまでの努力が無駄になりかねない」と警告した。
ドイツでは4月20日から一部の店舗で営業が再開されたが、メルケル首相は30日、新たな緩和措置を打ち出した。5月4日から動物園や競技場、美術館、宗教施設の再開を認める。一方、コンサートや主要なスポーツイベントなど大規模なイベントの再開は8月31日まで禁止される。学校や保育園の再開など一段の緩和措置については6日に各州の首相らと協議する方針。メルケル氏は「もとの状態に戻るのではなく、一歩ずつ前進する必要がある」と述べ、制限措置の段階的な緩和に理解を求めた。
また、オーストリア政府は28日、新規感染者が大幅に減少したことを受け、外出制限を4月30日で解除すると発表した。同国では4月14日から一部店舗の営業再開を認めていたが、5月15日からはレストランやカフェ、同29日からはホテルなども営業を再開できる。ただし、1つのテーブルにつくのは最大で大人4人と帯同する子どもに制限することや、従業員にマスクの着用を義務付けるなど、厳格なルールの順守が求められる。
このほかスペインは今月2日から運動や散歩のための外出を認めた。ただし、外出は自宅から1キロ以内とし、時間も午前6時から10時、午後8時から11時に限られる。イタリアも4日から州内での人の移動や製造業の再開を認める。