独・スペインなど外出制限を一部緩和、英・仏・伊は延長

欧州では新型コロナウイルスの感染拡大がピークを越えつつあるが、ドイツやオーストリア、スペインなどが外出制限などの措置を一部緩和して経済活動の再開に踏み切る一方、英国やフランス、イタリアなどは外出制限の延長を決めるなど、国によって対応が分かれている。

ドイツのメルケル首相は15日、新型コロナウイルス対策で導入した制限措置を段階的に緩和し、20日から広さが800平方メートル以下の小・中規模店舗の営業再開を認めると発表した。ただし、再び感染が拡大するのを防ぐため、店舗内や交通機関でのマスク着用を促す。

一方、レストランや劇場などの閉鎖措置は維持し、3人以上の集会などを禁止した行動制限は5月3日まで延長。学校は5月4日から段階的に再開する。また、コンサートなど大規模イベントの開催は8月末まで禁止される。

メルケル氏は記者会見で「壊れやすい中間的な成功にすぎない」と強調。新型コロナウイルス流行前の状況に戻るにはワクチンや治療薬の開発が不可欠で、ウイルスとの戦いは長期戦になるとの認識を改めて示した。

一方、スペイン政府は13日、非常事態宣言に基づく「必須でない産業」に従事する労働者の通勤禁止措置を解除し、建設業や製造業などの再開を認めた。同日発表された新たな死者数は517人で、これまでで最悪だった今月2日の950人から大幅に減少したことなどを受けた措置。ただし、在宅勤務ができない場合の通勤や生活必需品の買い物などを除き外出を原則として禁止する措置は今月26日まで維持する。

また、オーストリア政府は6日、欧州の主要国で初めて外出禁止や店舗閉鎖などの措置を段階的に緩和する方針を表明した。制限措置を導入した3月半ばには1日当たり1,000人を超えていた新規感染者数が200人台まで減少し、医療崩壊のリスクが低減したと判断した。14日から小規模店舗の営業を再開。5月1日からはショッピングモールなどの営業を認め、順調に推移すれば5月半ばにはレストランやホテルも再開できる見通しだ。

このほか19日までにスイスやデンマークも店舗閉鎖や学校の休校措置を段階的に解除する方針を打ち出している。

一方、英国政府は16日、3月23日から実施している外出制限を少なくとも3週間延長すると発表した。店舗閉鎖や生活必需品の買い物などを除く外出の禁止、3人以上の集会禁止などの措置により、新たな感染者数は現在ほぼ横ばいとなっているが、累計の感染者数は同日までに10万人を超え、死者数は1万3,729人に上った。

新型コロナに感染して療養中のジョンソン首相の職務を代行するラーブ外相は記者会見で「現在実施している制限措置の緩和を急ぐと、これまでに払われた犠牲と成果がすべて無駄になるリスクがある」と強調。外出制限を緩和するための条件として、継続的な死亡率の低下や感染が再拡大しても医療体制を確実に維持できることなどを挙げた。

また、フランスのマクロン大統領は13日、3月17日から実施している外出制限措置を少なくとも5月11日まで延長すると発表した。新規感染者数は減少傾向にあり、収束に向かう兆しは見え始めているものの、「感染拡大はまだ制御できていない」(マクロン氏)とし、国民に理解を求めた。

11日以降、学校は段階的に再開させる一方、レストランやカフェ、ホテルなどは引き続き営業を禁止する方針。ただ、可能な限り在宅勤務が命じられている職種では労働者の安全確保を徹底したうえで、段階的に制限を緩和するとしている。

イタリア政府も10日、3月10日から実施している外出制限を5月3日まで延長すると発表した。同国では新型コロナによる死者が2万人を超えたが、4月に入り新規感染者は減少傾向にある。コンテ首相は「難しい決断だが必要な措置だ」と強調。イタリアの感染は北部が中心だが、ここで制限を緩めれば医療体制が脆弱な南部で一気に感染が拡大する恐れがあると指摘し、5月3日以降の対応についても慎重に判断する意向を示した。

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