EUと英の交渉が新型コロナで停滞、期限延長も

欧州連合(EU)を離脱した英国とEUの将来の関係をめぐる交渉が、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で停滞している。英国側は2020年12月末となっている交渉期限の延長を拒否しているが、EU側では延長要請が必至との見方が広がっている。

自由貿易協定(FTA)など将来の関係の構築に向けた交渉は、英国が離脱した直後に双方の関係が激変し、貿易などに大きな影響が及ぶのを避けるため設けられた「移行期間」中の妥結が必要だ。しかし、これまでに行われた正式な交渉会合は3月2日~4日の1回だけ。それ以降は新型コロナ感染拡大に伴い、非公式なテレビ会議に切り替えられた。

EUと英国はそれぞれの協定案を提示済みで、これに基づいて非公式な会合が行われている。ただ、EUではバルニエ首席交渉官、英国ではジョンソン首相に続き、フロスト首席交渉官が新型コロナウイルスに感染し、隔離状態にある。ジョンソン首相の特別顧問で、交渉に影響力を持つカミングス氏も症状が出て隔離されている。このため、3月30日に始まった非公式会合は両首席交渉官抜きで行われた。交渉は事実上のストップに近い状態だ。官邸に隔離されながら新型コロナ対策の陣頭指揮を執っていたジョンソン首相は、症状が治まらないため、5日に検査入院した。

英首相府の報道官は30日、毎月2回行われることになっていた公式会合の方式を変え、継続的に協議することで、交渉は進むとして、移行期間の延長要請を否定した。しかし、双方とも現在は新型コロナ対応に忙殺されている。英政府筋がロイター通信に明らかにしたところによると、対EU交渉の専任だった多くの要員が新型コロナ対応に回されたという。

合意がないまま移行期間が過ぎ、新たな関係に突入すれば、双方の貿易で関税が復活するなど、大きな混乱が生じる。このため、欧州議会で最大会派の中道右派・欧州人民党(EPP)は3月30日、移行期間の延長を要請するよう英政府に呼びかける声明を発表。EU内では英政府が5月にも延長要請に踏み切るとの見方が出ている。

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