欧州中央銀行(ECB)は3月27日、ユーロ圏の銀行に対し、少なくとも2020年10月まで株主への配当支払いや自社株買いを控えるよう要請した。新型コロナウイルスの感染拡大で銀行の業績悪化が懸念される中、資本を温存して損失への備えや中小企業などへの支援を優先させるのが狙い。ECBは同措置により、約300億ユーロの節減が可能と試算している。
ECBがユーロ圏の全ての銀行に対して配当や自社株買いの中止を求めたのは今回が初めて。配当の支払い中止は19~20年分が対象で、すでに支払われた19年分の配当については遡って取り消しを求めることはしない。ただし、今後開かれる株主総会で配当金について決議する際、少なくとも20年10月1日以降に支払いを遅らせる方向で提案を修正するよう求めている。
ECBは声明で「新型コロナウイルスの感染拡大による損失を吸収するため資本を温存すると共に、深刻な打撃を受ける家計や小規模事業者の資金繰りを支援するため、銀行の株主に対しても協力を期待したい」と強調した。
ECBは3月12日に開いた定例理事会で、新型コロナウイルスの感染拡大による域内経済への悪影響に対応するため、量的緩和政策を年末までに1,200億ユーロ拡大すると決定した。急激な業績の悪化で資金繰りに行き詰まる企業が増えるとみられることから、低利の資金供給を大幅に拡大する方針を打ち出している。