欧州委員会は19日、新型コロナウイルスの感染拡大に対処するため、人工呼吸器やマスクなどを欧州連合(EU)加盟国が共同で備蓄する計画を発表した。医療崩壊の懸念が高まっているイタリアやスペインなどに対し、医療物資を安定的に供給するための措置。EU予算を活用してホスト国が効率的に医療品の調達を行い、感染者に必要な医療品が届くシステムを構築する。
EUではイタリアを中心に新型コロナの感染が急拡大するなか、3月初めにはドイツやチェコがマスクや消毒液などの輸出制限措置を発表したほか、フランスも医療関係者にマスクを優先配布するため、国が在庫や生産を管理する方針を決めた。一部の加盟国によるこうした囲い込みの動きに対し、各国が「一方的な措置だ」として猛反発。欧州委が調整に乗り出し、具体策を検討していた。
「rescEU」と名付けられた共同備蓄計画によると、対象となる医療物資は人工呼吸器、マスク、防護服、医薬品、実験用具など。品目ごとに1カ国または数カ国がホスト国として調達を担当する。当初予算として欧州委が5,000万ユーロを用意。調達コストの90%はEU予算で賄い、残り10%はホスト国が負担する。ホストに名乗りを上げた加盟国は20日以降、欧州委から直接予算を受け取ることができる。
欧州委のフォンデアライエン委員長は「EUとして初となる緊急医療物資の共同備蓄制度を導入し、欧州の連帯を行動に移す。これはすべての加盟国とEU市民の利益につながる。相互に助け合う以外に道はない」と強調した。
医療物資をめぐりEUが連帯できずに事態が悪化するなか、中国が経済的につながりの深いイタリアやセルビアなどに対して医療支援を活発化させている。スペインやフランスなどにも物資を送る動きをみせており、医療支援を通じて欧州での影響力を拡大する狙いがあるとみられる。