欧州委員会は11日、従来の大量生産・消費からサーキュラーエコノミー(循環型経済)への移行を実現するための新たな行動計画を発表した。消費者に「修理する権利」を保障し、電子機器メーカーに対して修理しやすいデザインの採用を促したり、バッテリーや修理部品の在庫を長期的に確保するよう求めることなどを柱とする内容。欧州委は2021年末までに法案をまとめる方針で、加盟国と欧州議会の承認を得て新ルールを導入する。
行動計画は、50年までに欧州連合(EU)域内の温室効果ガス排出量を実質ゼロにする目標などを掲げた「欧州グリーンディール」の柱の1つで、経済を持続可能な未来に適合させ、環境を保護しながら競争力を強化することを目指している。欧州委は「使い捨て社会」から脱却し、限られた資源を繰り返し利用する循環型経済に移行することで、30年までにEUの域内総生産(GDP)を0.5%押し上げ、新たに約75万人分の雇用が生まれると試算している。
電子機器に関しては、簡単に修理や再利用ができる持続可能な製品がEU基準として流通するよう、テレビやパソコン、白物家電などのエネルギー関連製品について環境配慮型の設計を義務付けた「EUエコデザイン指令」を拡充し、スマートフォンやタブレット端末を規制対象に加える。メーカーに部品の保有期間やソフトウエアのサポート期間を長く設定するよう求めるなどして早期の「旧式化」を防ぎ、1つの製品をできるだけ長期間使えるようにする。また、スマホなどモバイル端末の充電器を共通化するため、規格統一に向けた新ルールを策定する。さらに電子ゴミを減らして再資源化を推進するため、メーカーに対して使わなくなったモバイル端末などの回収や買い取りを義務付けるルールの導入も検討する。
電子機器以外では、包装廃棄物の削減を優先課題の1つと位置づけ、30年までにすべての包装を実行可能な方法で再利用またはリサイクル可能なものにする。また、繊維製品についてはリサイクル率を上げて循環利用を促進し、競争力の強化を図る。そのため欧州委が分別回収の手引きを作成し、25年までに加盟国が確実に実行できるようにする。さらに建設資材の安全性を定めた現行規則を見直し、特定の資材について再生利用率の要件を盛り込む。