欧州委員会は7月24日、次世代移動通信システム「5G」の安全性強化に向けて欧州連合(EU)加盟国が進めている取り組みを分析した報告書を公表した。5Gネットワークの安全性を脅かすリスク要因を取り除くため、関連機器の調達先を多様化することが不可欠と指摘し、加盟国に対し早急に必要な措置を講じるよう呼びかけた。欧州各国で中国の華為技術(ファーウェイ)製品を排除する動きが加速する可能性がある。
欧州委は昨年10月に公表した5Gネットワークに関するリスク評価報告書で、「EU域外の国やそうした国家の支援を受けた企業」によるサイバー攻撃などが、EUおよび加盟国の安全保障を脅かす「深刻な脅威」になり得ると分析。こうしたリスクを減らすため、通信機器の調達などに際して特定の企業に過度に依存することがないよう勧告した。また、今年1月には5Gの安全性強化に向けた勧告をまとめ、加盟国に対して「高リスク企業」がネットワークの中核部分に参入するのを制限または阻止できる仕組みを導入することなどを求めていた。
今回の報告書は、欧州委の勧告を受けた取り組みの進捗状況をまとめたもの。5Gネットワークの安全性を脅かす要因の排除に向けて多くの進展がみられるものの、さらなる取り組みが必要と指摘。リスクが高いサプライヤーへの依存度を低減するため、信頼できる複数の事業者の製品を採用する必要があると指摘し、早急に具体策を講じるよう求めた。また、加盟国のうち13カ国に対し、直ちに対内直接投資に対する審査制度を導入するよう勧告した。同制度は戦略的に重要な分野における企業買収などに際し、第三国が支援する企業などが関与している場合に政府が介入できるようにするための仕組みだ。
こうしたなか、英国に続いてフランス政府も5Gネットワークからファーウェイを排除する方針を固めたもようだ。欧米メディアが23日、関係者の話として報じた。ロイター通信によると、仏通信当局は国内の事業社に対し、エリクソンやノキアなどの5G関連機器を調達した場合は8年間有効な事業免許を付与するのに対し、ファーウェイ製品の場合は3~5年とし、免許が切れた後は更新しない方針を伝えた。また、現時点でファーウェイ製品を使用していない事業者は新たに同社から調達しないよう呼びかけたという。仏政府はこれまで公式にはファーウェイを排除しないと表明していたが、香港情勢などを受けて方針転換を図ったものとみられる。