欧州連合(EU)の欧州委員会は11日、フォンデアライエン委員長が英国のジョンソン首相と15日に首脳会談を行うと発表した。英国との自由貿易協定(FTA)など将来の関係の構築に向けた交渉がこう着状態にある中、首脳レベルの協議で、打開の糸口を探る。また、英政府は同日、EUと6月末から集中的に交渉を行うことで合意したことを明らかにした。
首脳会談はテレビ会議方式で行われる。EUからはフォンデアライエン委員長のほかミシェル大統領(欧州理事会常任議長)、欧州議会のサッソリ議長が参加する。
1月末にEUを離脱した英国との将来の関係をめぐる交渉は3月から4回にわたって行われたが、ほとんど進展がない。最大の焦点となっているFTAについて、EU側が関税ゼロには公平な競争環境の確保が不可欠として、英国が今後も競争法などEUのルールに従うことを要求しているのに対して、英国が反発していることや、漁業権をめぐる対立などが背景にある。
交渉期限は12月末だが、EU側は合意した協定を欧州議会と加盟国が批准するのに時間がかかるため、10月までの妥結が必要と主張している。4月以降の交渉は毎月1回、1週間をかけて行われていたが、期限が迫る中、双方は事態打開に向けて集中的に協議する必要があると判断。首席交渉官による交渉を6月29日の週から7月27日の週まで、毎週実施することで合意した。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、2回目以降はテレビ会議方式で行われていたが、状況が許せば対面方式に戻すことも決めた。
■ 「移行期間」延長拒否、英が正式通告
EUと英国との交渉では、離脱後の急激な変化を回避するため設けられた「移行期間」を延期するかどうかも大きな焦点となっていたが、英政府は12日、EU側に延長しないことを正式に通告した。
英国は1月31日にEUを離脱したが、20年12月末までは移行期間となるため、貿易など双方の関係は基本的に変わらない。同期間中にFTAや安全保障、外交、司法での協力など幅広い分野にまたがる将来の関係をめぐる交渉をまとめることになっている。ただ、EUと英国の離脱条件を定めた協定では、6月末までに合意すれば、移行期間を22年12月末まで延長することが可能だ。
EU側は交渉が停滞していることから、移行期間延長を働きかけていた。しかし、英政府は当初から延長に応じない姿勢を堅持。ゴーブ国務相は12日、欧州委のシェフチョビチ副委員長との会談で、延長拒否を伝えた。シェフチョビチ副委員長は「最終的な結論と受けとめる」と述べ、移行期間延長の可能性がなくなったことを確認した。
これによって双方は、期限内の交渉妥結の必要性が一段と高まった。ゴーブ国務相とシェフチョビチ副委員長の会談では、集中交渉を8、9月にも実施することで合意。英国側は当初、6月中に交渉の進展がみられない場合は、決裂を前提にFTAなしでの貿易開始に備えることに集中する方針を打ち出していたが、9月までは交渉が継続されることになった。