Shuttles&Co

都市交通の安全性や快適性の改善にデジタル技術を活用するドイツの政産学連携プロジェクト。実施期間は2020年1月1日~2022年6月30日までの2年半。ベルリン州政府の環境・モビリティ・消費者・気候保護省がプロジェクトを主導し、ドイツ連邦デジタル・交通省は総額980万ユーロを資金支援した。

当該プロジェクトを通して、フラウンホーファー・オープン通信システム研究所(FOKUS)は、デジタル地図と交通情報を改善するためのスマートフォンアプリを開発した。

路線バスやごみ収集車など定期的に市内を走行する車両のフロントガラスにスマートフォン設置して、ビデオ画像と全地球測位システム(GPS)により道路情報や位置データを収集・分析し、路線の変更など、最新の情報をデジタル地図に反映させる。ドライバーの注意散漫を防止するため、スマートフォンの画面はオフになっている。

当該アプリには、事前に訓練して物体を認識することができるニューラルネットワークが採用されている。具体的には、交通標識、信号、道路のラインなどを認識し、FOKUSのバックエンドに情報を送信し、道路工事による車線変更や臨時の自転車用通路の設置、交通標識に貼られたラベル、バス用車線にある駐車車両などの変更を分析する。FOKUSのバックエンドで変更が特定されると、行政当局に情報を送りデジタル地図に反映させる。

FOKUSは、ベルリンの近距離交通運営事業者であるBT Berlin Transportと協力し、12カ月間に渡り、複数のバス路線でアプリにより情報を収集した。一カ月あたり平均350時間、走行距離で約1万500キロメートル、約780万の物体を認識した。

アプリのデータは、レーザースキャンによる計測車両が収集するデータと比べ精度が低いものの、一日に何度を同じルートを走行することでデータの精度が向上する。

また、特別な計測車両を使ったデジタル地図用の更新は、数年に一回しか実施されておらず、膨大な情報を処理するための手間もかかる。

当該アプリを活用すると、例えば、道路沿いの樹木の成長が交通に危険を及ぼしている場合など、行政当局に情報を伝えることで迅速な対応が可能になる。

FOKUSは、後続プロジェクト「KIS’M」でBT Berlin Transportと協力し、アプリの開発をさらに進めていく計画。例えば、人工知能(AI)を活用し、路面の凹凸など認識できる物体の種類を増やすことなどを計画している。

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