操短手当を受給できない被用者、雇用主に給与支払いを請求できるか?

新型コロナウイルスの流行を受け昨年は多くの企業が店舗閉鎖や営業時間の大幅短縮に追い込まれ、多くの被用者は仕事ができなくなった。その大半は国の操短手当(Kurzarbeitergeld)を受給し、給与に比べ額が低いとはいえ生活費を確保できた。ただ、月給450ユーロ以下の「ミニジョブ」で働くいわゆるミニジョバーは操短手当を受け取ることができなかった。同手当は社会保険に加入義務のある被用者しか受給できない決まりであるため、同義務のないミニジョバーは給付の対象外となっているのである。では、コロナ禍で仕事がなくなった被用者がその間の給与支給を雇用主に請求することはできるのだろうか。この問題を巡る係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が13日に判決(訴訟番号:5 AZR 211/21)を下したので、取り上げてみる。

裁判はミシン販売事業者のブレーメン支店に勤務する店員が雇用主を相手取って起こしたもの。原告は月収が432ユーロで、ミニジョバーとして勤務していた。ブレーメン州政府は2020年3月23日、新型コロナ感染を防止するためにロックダウンを決定。スーパーや薬局など当座の生活に最低限必要な商品を販売する事業者を除き小売店の店舗営業を禁止した。被告はこれを受け店舗営業を停止。原告は4月の給与を受給できなかったことから、被告にその支払いを求め提訴した。

原告はその際、受領遅滞を請求の根拠とした。受領遅滞(Annahmeverzug)とは法律用語で、債務者が契約に基づいて履行を提供したにもかかわらず,債権者がその受領を拒否するか,受領できないことを指す。原告(債務者)は労働という履行を提供したが、被告(債権者)はこれを受領できなかったことから、被告には4月の給与を支払う義務があるとの論法だ。

これに対し被告は、州政府の営業停止命令はその対象となった個々の企業が制御できない「一般的な生活リスク」であり、雇用主でなく影響を受けたすべての人が均等に分担すべきものだと反論。原告の4月の給与を支払う義務はないと訴えた。

原告は一審と二審で勝訴したものの、最終審のBAGで逆転敗訴した。判決理由で裁判官は、ロックダウンに伴う休業は「高権の介入(hoheitlicher Eingriff)」の結果であり、雇用主が責任を負わなければならない「ビジネスリスク(Betriebsrisiko)」に当たらないと指摘。受領遅滞を根拠に給与の支払いを請求することはできないと言い渡した。

ミニジョバーが操短手当の支給対象外となっていることから原告が操短手当を受給できなかったことについては、社会保障制度上の間隙(かんげき)だと指摘。そのうえで、原告に操短手当の受給権がないことを根拠に、被告雇用主の賃金支払い義務を導き出すことはできないとの判断を示した。

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