採用時の年齢が高い被用者を企業年金の支給対象から除外することは一般的に行われている。そうしたルールが不当な年齢差別に当たるかどうかを巡る係争で、最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が判決(訴訟番号:3 AZR 147/21)を下したので、取り上げてみる。
裁判は労働組合の秘書課に勤務する1961年6月22日生まれの女性社員が同労組を相手取って起こしたもの。同労組では企業年金の支給対象を採用時の年齢が55歳未満の被用者に制限されていた。原告は採用日の2016年7月18日時点で55歳に達しており、企業年金の受給資格がなかった。これが不当な年齢差別と女性差別に該当するとして提訴した。
一審と二審は原告の訴えを退け、最終審のBAGも原告敗訴を言い渡した。判決理由でBAGの裁判官は、企業年金の受給資格で年齢制限を設けることは「客観的で適切だ」とした一般平等待遇法(AGG)10条の規定を指摘。企業年金の受給資格を55歳未満の採用者に制限した被告のルールはAGG7条1項で禁じられた不当な年齢差別に当たらないとの判断を示した。
また、同ルールが女性差別に当たるとする原告の主張についても、ドイツの平均就労期間が女性で平均36.5年、男性で41.9年であることを指摘。この差は小さく、年齢制限の影響で女性が不当に差別されていることはないと言い渡した。