病気と偽って仕事を休んだ被用者を雇用主は即時解雇できる。勤務の義務を不正に怠るともに、給与の継続支給を受ける詐欺行為は、労使関係の維持に必要不可欠な信頼関係を修復不能なほどに崩すものと判断されるためである。重大な理由がある場合は被用者を即時解雇できるとした民法典(BGB)626条1項の規定が適用される。この問題に絡んだ係争でケルン州労働裁判所が昨年12月に判決(訴訟番号:8 Sa 491/20)を下したので、これを取り上げてみる。
裁判は物流企業の社員が同社を相手取って起こしたもの。原告は医師が発行した就労不能証明書(Arbeitsunfaehigkeitsbescheinigung=AU)を提出し、2019年8月29日から9月14日までの期間、病休した。医師の所見は体調不良と疲労だった。
原告は病休中の9月8日、ピザ屋で出前用の発泡スチロール容器を配達車両に詰め込む作業を行った。その場面をたまたま目撃した上司は写真を撮ったうえで、雇用主に連絡。雇用主は病休明けの16、17日に原告から事情を聴取したうえで、17日付の文書で即時解雇を通告した。解雇理由として◇副業許可を得ていないにもかかわらずピザ屋で45分間、仕事をした◇病気でないにもかかわらずAUを不正に取得した――を挙げた。
これに対し原告は、知り合いのピザ屋で注文の品ができるのを待つ時間、出前の詰め込み作業を手伝っただけだと反論。解雇を無効として提訴した。
原告は一審と二審でともに勝訴した。判決理由で二審のケルン州労裁は、虚偽の病休を理由に解雇する場合は客観的な証拠の提示が必要だと指摘。そのうえで原告が◇副業を行っていた◇虚偽のAUを作成させた――という主張を被告は証明できなかったと言い渡した。
最高裁の連邦労働裁判所(BAG)への上告は認めなかった。